修辞技法
和歌特有の表現技法を理解して
歌の深い意味を読み取る
修辞技法とは
和歌には、表現を豊かにするための様々な修辞技法(レトリック)が使われています。これらを理解することで、歌の持つ複層的な意味や美しさを味わえます。
受験では修辞技法の識別と、それが歌の解釈にどう影響するかが問われます。
掛詞(かけことば)
定義:一つの語に二つ以上の意味を持たせる技法。同音異義語を利用して、複数の意味を重ねます。
効果:歌に奥行きと余韻を与え、限られた文字数で豊かな表現を可能にします。
百人一首での用例
第17番・在原業平朝臣
ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは
「からくれなゐ」= 唐紅(深い紅色)+ 韓(から)+ 紅
紅葉の色と異国のイメージを重ねる
第56番・和泉式部
あらざらむ この世のほかの 思ひ出に 今ひとたびの あふこともがな
「ふる」= 降る(雨が降る)+ 経る(時が経つ)
※この歌には掛詞はありませんが、第56番では「ふる」が有名
第72番・祐子内親王家紀伊
音に聞く 高師の浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ
「かけじ」= 掛けじ(心に掛けまい)+ 懸けじ(波を懸けまい)
恋心と波の両方の意味
枕詞(まくらことば)
定義:特定の語の前に置かれる、決まった修飾語(原則5音)。意味よりも音の響きや伝統的な結びつきを重視します。
効果:歌に古典的な格調を与え、リズムを整えます。
代表的な枕詞
あしびきの
→ 山
ちはやぶる
→ 神、宇治
ひさかたの
→ 光、天、月、雨
あをによし
→ 奈良
第3番・柿本人麻呂
あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む
「あしびきの」は「山」を導く枕詞。山鳥の長い尾のように長い夜を一人で寝るのか、という歌。
縁語(えんご)
定義:歌の中に、意味的に関連のある語を散りばめる技法。
効果:歌に統一感を与え、イメージを豊かにします。
第97番・権中納言定家
来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ
縁語:「浦」「夕なぎ」「藻塩」「焼く」「こがれ」
海辺で塩を焼く情景に関連する語が、恋の焦がれる心情と重なる
序詞(じょことば)
定義:ある語を導き出すために、その前に置かれる7音以上の修飾部分。枕詞より長く、作者が自由に作れます。
効果:比喩的なイメージを通じて、本題への導入を作ります。
第1番・天智天皇
秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ
「秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ」が序詞
仮庵の苫(屋根)が粗いので、という状況から「露にぬれる」を導く
修辞技法の見分け方
掛詞の見つけ方
- 一つの語が二つの文脈で意味を持つかどうか確認
- 自然の景物と人の心情が同音の語で結ばれていることが多い
- 「ふる」「まつ」「あき」など、よく使われる掛詞を覚えておく
枕詞の見つけ方
- 歌の冒頭に5音の修飾語がある場合は枕詞の可能性
- 代表的な枕詞を暗記しておく
- 枕詞自体には深い意味がないことが多い
縁語の見つけ方
- 歌の中に同じテーマに関連する語が複数あるか確認
- 海、山、恋など、特定のイメージに関連する語群を探す
- 掛詞と組み合わせて使われることが多い