春すぎて 夏来にけらし 白妙の
衣ほすてふ 天の香具山
春すぎて 夏来にけらし 白妙の
衣ほすてふ 天の香具山
読み はるすぎてなつきにけらししろたへの ころもほすてふあまのかぐやま
歌意
春が過ぎて夏が来たようだ。真っ白な衣を干すという天の香具山よ。
超現代語訳
気づいたらもう夏じゃん! 香具山に白い服いっぱい干してあるの見えるし、あの景色見ると「あ〜夏キタこれ」ってバイブス上がるわ〜。
この歌を、あなたの言葉で訳してみませんか?
みんなの超現代語訳に投稿する決まり字
はるす
文法解説
【二句切れ】「来にけらし」の「に」は完了の助動詞「ぬ」の連用形。「けらし」は過去の助動詞「けり」+推定の助動詞「らし」が融合したもの。
掛詞
なし
補足解説
持統天皇は天智天皇の娘。香具山は奈良県橿原市にある山で、大和三山の一つ。白い衣と山の緑のコントラストが鮮やかな夏歌。
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この歌はどんな場面で詠まれたのか
春が過ぎて夏が来たらしい。真っ白な衣を干すという天の香具山に——季節の移り変わりを、山にひるがえる白い衣で捉えた歌です。
天の香具山は、奈良県橿原市にある山です。畝傍山・耳成山とあわせて大和三山と呼ばれ、なかでも香具山は「天(あま)の」という美称を冠される特別な山でした。天から降りてきた山という伝承があり、神聖な場所とされていたのです。
その神聖な山に、白い衣が干されている。日常の生活の光景が、聖なる山を背景に置かれることで、鮮やかな対比を生みます。青葉の山に白布が映える視覚的な鮮烈さが、この歌の魅力です。
なお、白い衣が何であったかについては、夏の衣替えの衣とする説、神事に用いる衣とする説などがあります。
『万葉集』の歌がどう変わったか
この歌には、押さえておきたい重要な点があります。『万葉集』に載る原型と、百人一首の形とが違うのです。
『万葉集』では「春過ぎて夏来たるらし白妙の衣干したり天の香具山」という形で伝わっています。百人一首では、これが「夏来にけらし」「衣ほすてふ」に変わっています。
違いは二点。「来たるらし」が「来にけらし」になり、「干したり」が「干すてふ(干すという)」になりました。
前者は、確かな推量から、伝え聞いたような柔らかい語調への変化です。後者はさらに大きく、「干している」という直接の目撃が、「干すという」という伝聞に変わっています。つまり万葉の歌が目の前の景を詠んでいたのに対し、百人一首の形では、実景ではなく伝え聞いた話として語られているのです。
写実から伝承へ。この変化は、時代の好みが素朴な写生から優美な余情へ移ったことを示すものとして、しばしば取り上げられます。百人一首に採られたのは『新古今和歌集』所載の形です。
詠み手・持統天皇について
持統天皇(645〜702年)は第41代天皇。天智天皇(百人一首1番の作者)の娘であり、天武天皇の皇后でした。
夫である天武天皇の死後、皇位を継いで即位。律令国家の体制を整え、日本初の本格的な都城とされる藤原京へ遷都しました。この藤原京は、まさに天の香具山を望む場所に置かれています。
百人一首は1番に父・天智天皇、2番に娘・持統天皇を置いて始まります。親子の天皇を巻頭に据えた構成です。