💗 恋の歌
片思い、逢瀬、忍ぶ恋、別れ...平安貴族の恋愛模様を詠んだ歌
全43首
あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の
ながながし夜を ひとりかも寝む
筑波嶺の 峰より落つる みなの川
恋ぞつもりて 淵となりぬる
陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに
乱れそめにし われならなくに
住の江の 岸に寄る波 よるさへや
夢の通ひ路 人目よくらむ
難波潟 短き芦の ふしの間も
逢はでこの世を 過ぐしてよとや
わびぬれば 今はた同じ 難波なる
みをつくしても 逢はむとぞ思ふ
今来むと いひしばかりに 長月の
有明の月を 待ち出でつるかな
名にし負はば 逢坂山の さねかづら
人に知られで くるよしもがな
みかの原 わきて流るる いづみ川
いつ見きとてか 恋しかるらむ
有明の つれなく見えし 別れより
暁ばかり 憂きものはなし
忘らるる 身をば思はず 誓ひてし
人の命の 惜しくもあるかな
浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど
あまりてなどか 人の恋しき
しのぶれど 色に出でにけり わが恋は
ものや思ふと 人の問ふまで
恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり
人知れずこそ 思ひそめしか
契りきな かたみに袖を しぼりつつ
末の松山 波越さじとは
逢ひ見ての のちの心に くらぶれば
昔はものを 思はざりけり
逢ふことの 絶えてしなくは なかなかに
人をも身をも 恨みざらまし
あはれとも いふべき人は 思ほえで
身のいたづらに なりぬべきかな
由良の門を 渡る舟人 かぢを絶え
ゆくへも知らぬ 恋の道かな
風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ
くだけてものを 思ふころかな
御垣守 衛士のたく火の 夜は燃え
昼は消えつつ ものをこそ思ヘ
君がため 惜しからざりし 命さへ
長くもがなと 思ひけるかな
かくとだに えやはいぶきの さしも草
さしも知らじな 燃ゆる思ひを
明けぬれば 暮るるものとは 知りながら
なほ恨めしき 朝ぼらけかな
嘆きつつ ひとり寝る夜の 明くる間は
いかに久しき ものとかは知る
忘れじの 行末までは かたければ
今日を限りの 命ともがな
あらざらむ この世のほかの 思ひ出に
今ひとたびの 逢ふこともがな
有馬山 猪名の笹原 風吹けば
いでそよ人を 忘れやはする
やすらはで 寝なましものを さ夜ふけて
かたぶくまでの 月を見しかな
今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを
人づてならで 言ふよしもがな
恨みわび ほさぬ袖だに あるものを
恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ
春の夜の 夢ばかりなる 手枕に
かひなく立たむ 名こそ惜しけれ
音にきく たかしの浜の あだ波は
かけじや袖の ぬれもこそすれ
憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ
はげしかれとは 祈らぬものを
瀬を早み 岩にせかるる 滝川の
われても末に 逢はむとぞ思ふ
長からむ 心も知らず 黒髪の
乱れて今朝は ものをこそ思ヘ
思ひわび さても命は あるものを
憂きにたへぬは 涙なりけり
夜もすがら もの思ふころは 明けやらで
閨のひまさへ つれなかりけり
嘆けとて 月やはものを 思はする
かこち顔なる わが涙かな
難波江の 芦のかりねの ひとよゆゑ
みをつくしてや 恋ひわたるべき
玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば
忍ぶることの 弱りもぞする
来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに
焼くや藻塩の 身もこがれつつ
人もをし 人も恨めし あぢきなく
世を思ふゆゑに もの思ふ身は